NBAの日本語解説などを聞いていると、「スラッシャー」「3&D」「リムプロテクター」など、様々な選手のタイプを専門用語で呼んでいるのがわかるかと思います。
しかし、これは初心者にとってはなかなか説明もされず理解しづらいところ。
そこで今回は、「スラッシャー」というタイプを主軸として、一般的に紹介される選手のタイプやその特徴、有名な選手などをご紹介します。
バスケのスラッシャーとは
ではまず、スラッシャーと呼ばれるタイプの選手から見ていきます。
スラッシャーとは、主にガードの選手で、身体能力が高く、ドライブでゴールにアタックを仕掛けることを得意とするような選手のことを指しています。
スラッシャーの特徴と役割
スラッシャータイプの選手のほとんどは、身長がそこまで高くないガードの選手で、非常に身体能力が高く、クイックネスやジャンプ力のある選手であることが多いです。その身体能力やハンドリングスキルを活かして、リングにアタックを仕掛けることによって、ファウルを受けたり、ディフェンスを収縮させてフリーの味方を作ったりすることが大きな役割となります。
また、リング近くに攻めるため、相手ディフェンスが寄ってこなければ簡単にレイアップなどで得点を重ねることも求められます。身体能力が高く、派手にも見えるため、ハイライトプレイが多いことも特徴ではありますが、密集地帯にボールを持って飛び込むため、ターンオーバーが多くなる傾向が強いというのも特徴です。
スタッツ的にはシュートの確率が悪くても、簡単に味方がリバウンドを取れるようなドライブの仕方をしていたりするので、スタッツシート上以上に重宝されたりします。
スラッシャータイプの主な選手
- ドウェイン・ウェイド
- ラッセル・ウエストブルック
- アレン・アイバーソン
- ジョン・ウォール
他の選手のタイプ
では、スラッシャー以外のタイプの選手も見てみましょう。
シューター
こちらは、主にジャンプシュートが得意な選手がこういった形で表現されます。
身長は低めなガードのポジションの選手が多いですが、2021年現在では、インサイドのポジションであるにも関わらず、シューターと言われる選手も出てきています。
主な選手
- レジー・ミラー
- カイル・コーバー
- ダービス・ベルターンス
- JJ・レディック
- ジョー・ハリス
スコアラー
スコアラーと表現することは少ないですが、明確にシューターともスラッシャーとも区別しにくいのですが、得点力に優れた選手のことを指します。身体能力が高く、ドライブもシュートも得意な選手にあたり、いわゆる点取り屋というイメージです。
主な選手
- ブラッドリー・ビール
- ジェームズ・ハーデン
- ケビン・デュラント
- デビン・ブッカー
- コービー・ブライアント
司令塔
司令塔タイプの選手は基本的にPGのポジションについていることがあり、主にオフェンス時の組み立てや味方への指示、パスの精度が高いプレイヤーがこう呼ばれます。オフェンスの指揮官ではありますが、自ら点を取ることがメインではないため、ボールを触る時間に対して、得点が少ないことが多いです。
主な選手
- ジェイソン・キッド
- ジョン・ストックトン
- クリス・ポール
- スティーブ・ナッシュ
- 田臥勇太
ストッパー(ディフェンシブスペシャリスト)
ストッパーやディフェンシブスペシャリストと呼ばれるタイプの選手が、ディフェンスが得意で、大柄ではなく、PG〜SFあたりまでを守ることのできる選手です。スタッツ上はあまり目立たないこともあり、こういった括りで紹介されることは少ないです。
主な選手
- アンドレ・ロバーソン
- トニー・アレン
- ゲイリー・ペイトン
- ドレイモンド・グリーン
3&D
3&D(スリーアンドディー)はここ数年で非常に注目されている選手のタイプですが、こちらは、シューター + ディフェンシブスペシャリストという意味で、3&Dと呼ばれています。そのため、攻撃の面ではボールをキャッチしてシュート(キャッチ&シュート)を打つことが多く、ディフェンスでは相手のエースの選手にマークして、得点を遮断するような役割を担います。
主な選手
- クレイ・トンプソン
- ダニー・グリーン
- トレバー・アリーザ
- 渡邊雄太
ツーウェイプレイヤー
ツーウェイプレイヤーとは、2way契約の選手のことではなく、ディフェンスもオフェンスもインパクトを残すことのできる選手です。3&Dとの違いは、オフェンス時に自分でシュートクリエイト(1対1などで仕掛けてシュート機会を作ること)もできる選手で、得点を量産できる選手がツーウェイプレイヤーと呼ばれ、キャッチして3Pを高確率で決めることのできる選手を3&Dと呼んだりします。
主な選手
- カワイ・レナード
- ポール・ジョージ
- スコッティ・ピッペン
- 八村塁
※八村選手はここに入れるべきか迷いますが、ワシントン・ウィザーズの方針からすると、こういった選手になって欲しいという育て方をしていますので、ここに入れています。
リムプロテクター
リムプロテクターとは、主にゴール近くのディフェンスを頑張るビッグマンの選手を指し、大柄でブロックショットの得意な選手がこう呼ばれます。
また、プレッシャーをかけてシュートを落とさせるのも重要なため、リバウンドの数が多いことも特徴の一つです。基本的にはインサイドプレイヤーの役割となります。ちなみに、この選手たちの多くはオフェンスではインサイドでリバウンドを押し込むことが得意なため、オフェンス時は「ガラスクリーナー」と呼ばれることも多いです。
主な選手
- アンドレ・ドラモンド
- ドワイト・ハワード
- シャキール・オニール
- ルディ・ゴベア
- ディケンべ・ムトンボ
ストレッチビッグ
ストレッチビッグはここ数年で急激に必要とされてきた選手のタイプで、ビッグマンでありながら、3Pシュートも得意という選手です。
少し前まで、インサイドの選手は3Pは打たないというのが常識でしたが、3Pが重要視される現代バスケでは、インサイドポジションの選手も3Pを要求されるため、このタイプの選手が非常に重宝されています。
ちなみに、PFのポジションのストレッチビッグを「ストレッチ4」、Cのポジションのストレッチビッグを「ストレッチ5」と表現することもあります。
主な選手
- アンソニー・デイビス
- ケビン・ラブ
- クリスタプス・ポルジンギス
- ジャレンジャクソンJr.
- ラシード・ウォレス
オールラウンダー
オールラウンダーとは、主にオフェンス面で、リバウンドもアシストも得点も全てをこなせる選手のことです。ディフェンス面はあまり重視されませんが、ディフェンスでも複数のポジションを守ることができ、オフェンス面では司令塔からリバウンダーまであらゆる面で活躍できる選手のことを指します。
主な選手
- マジック・ジョンソン
- レブロン・ジェームズ
- ルカ・ドンチッチ
- アンドレイ・キリレンコ
- ベン・シモンズ
時代背景と選手のタイプ
時代背景とともに、重宝されるタイプや選手が変わってきていますので、少しその辺りもご紹介します。
バスケットボール初期
バスケットボールが始まった頃、3Pシュートというものがありませんでしたので、全ての得点は2点であり、24秒ルールなどもありませんでしたので、ゴールにできるだけ近くでシュートを打てて、相手のシュートを叩き落とせるビッグマン(センター)と、ボールをキープできるガードの選手が重宝されていました。
しかし、それだけでは見ている方もつまらないし、フォワードあたりの選手の活躍が少なくなるため、フォワードの選手がジャンプシュートを磨いて、シューターという存在が誕生しました。
高い身体能力とスコアラーとビッグマン
バスケットボールが広まり始めて、参加する人が増えてくると、非常に高い身体能力や屈強な身体、バスケのセンスを兼ね備えた、オスカーロバートソン等の万能型のオールラウンダーやスコアラーが誕生しました。
また、それまでのビッグマンの概念は2m程度だったのに対し、ウィルト・チェンバレンのような210cmを超えるようなインサイドを支配するような選手が誕生し始めたのもこの頃です。
これによって、非常に能力の高い選手 or 超大型ビッグマンが活躍するのがバスケットボールという世界になってしまい、ここにさらにシューターが加わるというような形でした。
3Pの誕生とスピードの加速
身長の低い選手の活躍の場を広げ、試合のゲーム性を高めるために、3Pや24秒ルール、8秒ルールなどが導入され、バスケットボールはよりスピードが重要になってきたため、センタープレイヤー中心ではなく、ガードの選手の重要性が高まるような時代がやってきました。
このあたりから活躍し出したのがマジック・ジョンソンやラリー・バードといった、NBAの黄金期と言える時代のスター選手です。
スラッシャーとスコアラーの時代
神様マイケル・ジョーダンがNBAにやってきてからは、バスケットボールはセンタープレイヤーのものではなく、完全にガードの華やかなプレイをする選手のものになりました。
このあたりの時代から、センターはリバウンドとスクリーンで、ガードの選手が得点をとって、ゲームをコントロールするという構図が出来上がっていました。しかし、得点の多くは、2021年現在のNBAでは非効率とされているミドルレンジからのシュートが多く、よりディフェンシブでロースコアなゲームの多い時代となりました。
そのため、この時代に活躍していたのは、非常に強力なディフェンス力を持つ選手と、スラッシャーやスコアラータイプのガードの選手です。
スーパーデュオやトリオの時代
ジョーダンの時代以降、優勝するには1人のスター選手だけではなく、その選手だけではできない仕事を補うことのできる、別のスター選手の存在というのが強くなり、「どんなチームにするか」ではなく、「誰を中心にチームを作るか」というような方向性で、チームが形成されることが多くなりました。
これによって、司令塔とスコアラーのコンビのストックトン&マローンのジャズ、スコアラーとゴール下の支配者であった、コービー&シャックのレイカーズや、レブロン・ウェイド・ボッシュのBIG3のヒートなど、異なるタイプのスター選手をチームに引き入れて、活躍される必要が出てきました。このあたりから、チーム事情によって、さまざまなタイプの選手の需要が高まってきます。
3P全盛期へ
統計分析による戦術形成がメインとなった今、ミドルレンジをある程度捨てるという選択肢をとって、得点を量産するチームが続出し、レイアップと3Pで効率的にスコアをとっていくことが中心となりました。
これによって、それまでには考えられないほどの3Pが放たれるようになり、ゴール下 or 3Pというシュートを選択するという戦術から、インサイドプレイヤーも、ポストでポジション採りをすれば良いのではなく、外にでてある程度の確率で3Pを沈めることを求められるようになり、ストレッチビッグという存在が誕生してきたのです。
最後に
ここに紹介した選手のタイプは、実はまだ一例です。
また、明確な基準があるわけではありませんので人によっては、
別のタイプだということもあるかもしれません。
今後も今までに見たことの内容なタイプの選手も出てくると思いますので、
一つの参考として、この記事を見ていただけると幸いです。
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