バスケを始めたり、バスケットボールの試合を観戦していると、頻繁に「スクリーン」という単語が飛び交っていることに気が付くと思います。しかし、当たり前すぎてなかなか人には聞けないことでもあるかと思います。
そこで今回は、スクリーンの意味や種類、そして使い方のポイントなどをご紹介します。
バスケにおけるスクリーンってなに?
まずは、スクリーンの意義や意味、どんなプレイなのかを解説します。
スクリーンプレイとは
バスケットボールにおけるスクリーンプレイとは、オフェンス側の選手が相手ディフェンスの進路を壁(ついたて)のように防いで動く邪魔をし、味方選手が攻めやすい状況を作るためのプレーを言います。
簡潔に解説すれば、ファウルにならないようにディフェンスの邪魔をして、味方選手をできるだけフリーにしようとするプレイとなります。
スクリーンという単語だけではなく、「ピック」という単語も使われ、ほぼ同じ意味を指しています。
スクリーンのユーザーとは
スクリーンは、「スクリーンをする人」と「スクリーンをしている選手を使う人」が存在し、スクリーンをしてくれている選手を使って、できるだけ有利な状況を作り出そうとしている選手側を「ユーザー」と呼びます。
味方をフリーにしようと、相手の邪魔をする人ではなく、フリーにされる人のことがユーザーとなります。
スクリーナーとは
ユーザーと逆で、スクリーンをかける人のことを「スクリーナー」と呼びます。
スクリーナー側は、一般的に身体の大きなインサイドプレイヤーが、小さなディフェンス選手相手に行うことも多く、「使われる側」ではありますが、一気に身長のミスマッチになって、スクリーナー側にパスが渡って得点に繋がるということがよくあります。
スクリーンの種類の2種類
スクリーンは、大きく分けて2つの種類があり、それぞれ、
- オフボールスクリーン
- オンボールスクリーン
と呼ばれています。
ちなみに、リバウンドのポジション争いで「スクリーンアウト」と呼ばれるものがありますが、こちらは、リバウンドのタイミングで相手選手に良いポジションを取らせないために行うプレイで、味方のオフェンスを有利にさせるようなこの記事で紹介するスクリーンとは少し概念が違うプレイになりますので、ここでは割愛します。
オフボールスクリーン
オフボールスクリーンとは、ユーザーもスクリーナーもボールを持っていないパターンで起こるスクリーンプレイで、ユーザーをフリーにしてボールをキャッチさせることを第一の目標にしたプレイになります。
ダウンスクリーン
ダウンスクリーンとは、トップやゴールの離れた位置から、エンドライン側に向かってスクリーンをかけ、エンドライン付近などにいる味方選手をフリーにしようとするスクリーンです。ユーザーの選手に45°やトップなどの位置でフリーでボールを持たせたい時に用いられます。
フレアスクリーン
フレアとは「広がる、拡大する」というような意味を持つ単語で、ダウンスクリーンと少し違い、ユーザーがボール側に向かうような動きではなく、ボールから遠ざかるような形にさせるスクリーンになります。
ユーザーがシューターにあたるようなプレイヤーのパターンが多く、ユーザーにスリーポイントを打たせたい場合などによく使われます。この場合には、スクリーンをかけた場所にディフェンスが複数人たまり、そこを超えてパスを出す必要があるので、ボールがカットされやすいため、注意が必要です。
バックスクリーン(アップスクリーン)
バックスクリーン(アップスクリーン)とは、ダウンスクリーンとは逆で、ユーザーが45°付近やトップにいるパターンで、スクリーナーがゴール側にセットし、ユーザーがゴール下に飛び込んでいくような動きに対するスクリーンです。
成功した場合にはゴール下でフリーになることができるため、有効な手段となりますが、ユーザー側がガードの選手で、スクリーナーがインサイドプレイヤーであった場合で、ディフェンスがスイッチで対応してきた時に、ユーザー側がディフェンスを振り切れないと、高さのミスマッチで逆に守られてしまうため、注意が必要です。
オンボールスクリーン
オンボールスクリーンとは、オフボールスクリーンとは別で、ユーザーもしくはクリーナーがボールを持っている場合に行われるスクリーンです。
オンボールスクリーンは4つの種類があり、
- ピック&ロール(ダイブ)
- ピック&ポップ
- ハンドオフ
- ドリブルハンドオフ
となります。
ピック&ロール(ダイブ)
ピック&ロールはスクリーンを使った攻撃パターンの基本中の基本の攻撃で、ボールを持っているユーザーがドリブルをしている(し始める)ところに、スクリーナーが近づいていきスクリーンをセット。ユーザーが自分についているディフェンスをスクリーナーにぶつけるような形でドリブルをしていくようなプレイになります。
そして、スクリーンに相手ディフェンスが引っかかった場合には、スクリーナーはロール(自分についているディフェンスを抑えるような形)を行って、ゴールに向かってボールを受けに向かう(ダイブ)ような形がピック&ロールの基本形と呼ばれています。
特に、スクリーンをかけたタイミングでディフェンス側がスイッチで対応してきたような場合には、スクリーナーに対して、ガードの選手がマークするような形になるため、ピック&ロールでスクリーナーがポジションをとったり、ダイブするのが非常に有効になってきます。
ピック&ポップ(ロールオフ)
ピック&ポップ(チームによってはロールオフと呼んだりもするようです。)は、ピック&ロールとスクリーンを引っ掛けるところまでは同じですが、スクリーンがかかった後に、スクリーナーがゴールに向かうような動きではなく、スリーポイントライン側に広がる動きを取る部分が違います。
最近のバスケットボールでは、ストレッチ4やストレッチ5などと呼ばれる、スリーポイントが得意なビッグマンが増えてきたため、非常に増えてきた戦術です。
スクリーナーが外角のシュートが得意ではない場合でも、ゴール下のスペースを空けるために取られることもありますが、基本的にはスクリーナーになる選手が外角のシュートが得意でないと、有効な攻撃にはなり得ないものになります。
ハンドオフ(トレイル)
ハンドオフとは、これまでのスクリーンとは違い、スクリーナーになる選手がボールを保持している場面からスタートします。ここから、ユーザーとなる選手がボールをもらいに近づいてきて、手渡しでボールを渡すタイミングでスクリーンを仕掛け、相手ディフェンスとユーザーの間に瞬間的にズレを作るプレイになります。別名トレイルと言われているプレイです。
他のスクリーンプレイと違って、スクリーナーが仕掛けに行くというよりは、ユーザー側が動いて仕掛けに行くという面で違いがあるのに加え、結構な確率で瞬間的にユーザーがフリーになるため、優秀なシューターであれば、それを利用してシュートを沈めることができるでしょう。
最近のバスケではあまり使われなくなりましたが、ポストにビッグマンを配置してボールを保持している場面で、そのビッグマン目掛けて味方のガードの選手が飛び込んでボールを渡すようなプレイもこのハンドオフ(トレイル)の一種となります。
ドリブルハンドオフ
ドリブルハンドオフとは、ハンドオフの一種ですが、スクリーナーとなるボールマンがドリブルをしている場面から始まり、ユーザー側に少しドリブルで近づいていき、ユーザー側が動き出した瞬間にドリブルを止めてハンドオフに切り替えるプレイになります。
効果としては、一般的なハンドオフと同じではありますが、ドリブルをしているタイミングから始まるため、ハンドオフ自体をフェイントにして、スクリーナーになる選手がドライブを仕掛けたりすることもできるため、ディフェンスがスクリーンの対応だけに集中できないというポイントがあり、スクリーン自体の成功率が比較的高いと言えます。
ただし、スクリーンをするタイミングでしっかりと止まれないことがあったりするため、オフェンスファウルになりやすいので注意が必要です。
効果的なスクリーンプレイをするためのポイント
オンボールスクリーンでもオフボールスクリーンでも、同じスクリーンプレイであるため効果的なスクリーンプレイを成立させるためには共通したポイントがあります。
スクリーナーの近くを通る
ユーザー側とスクリーナーの間にスペースがある場合、ディフェンスはその間を潜って行くことができ、スクリーンがしっかりとかからないということがよく起こりうるため、ユーザーはスクリーンにぶつかるスレスレを狙って動くことで、しっかりとスクリーンにディフェンスを引っ掛けることができるので、有効なスクリーンプレイになると言えるでしょう。
スクリーナーはしっかりと止まる
バスケのルールでは、スクリーナーは動いてしまうとオフェンス側のブロッキングのファウルを取られてしまいます。
こういったストップしていないスクリーンのことを「ムービングピック」や「イリーガルスクリーン」と呼んだりしますが、審判によって基準が若干曖昧な部分ではあるにせよ、1試合に1度はコールされたりするようなファウルであり、審判も非常によく見ている部分になりますので、しっかりとスクリーナーになる場合には、ストップをしてファウルを取られないようにすることが重要です。
スクリーン後の動きをワンパターンにしない
上記で紹介したスクリーンプレイのどれであったとしても、ワンパターンになってしまうと、ディフェンス側も読めてしまうため、試合中の何回かに1度は別のパターンの動きをすることが重要なポイントになります。
例えば、常にピック&ロールでゴール下にスクリーナーがダイブしてくるようなパターンしかない場合には、ディフェンス側も対策を練りやすいですが、ダイブだけではなく、ピック&ポップで外に広がったりすれば、なかなか読みにくくなります。
また、ユーザー側もスクリーンを毎回使うのではなく、それをフェイントにしてその場でシュートを放ったり、スクリーンとは逆側に進んだりすることで、相手ディフェンスに読まれないような攻撃を繰り広げることができ、スクリーンプレイも活きてきます。
スクリーンプレイに対するディフェンスのポイント
スクリーンプレイはオフェンス側の基本的な攻撃パターンであるため、非常に多用されます。そこでスクリーンプレイに対してのディフェンス側の対応もご紹介しておきます。
声を出すことが最も重要
ディフェンス側がスクリーンプレイを攻略する方法として最も重要なことは、味方が声を出してスクリーンがセットされたことを教え合うことです。
特にスクリーンをセットされて引っ掛けられるディフェンス(ユーザーのマークマン)には必ず気づかせてあげることがポイントで、スクリーナーのマークマンをしている選手が、「スクリーン右!」などと声をかけるように心がけましょう。
ちなみにこのコミュニケーションはNBAのレベルでも観られますので、どのレベルであってもこの部分が一番重要であるということが言えます。
スクリーンに対する守り方は3つ
スクリーンに対するでディフェンスの守り方は3種類あり、
- ファイトオーバー
- スライド
- スイッチ
と呼ばれています。
ファイトオーバー
ファイトオーバーとは、スクリーンに引っ掛けられていたとしても、マークマンを離さないようにスクリーンとマークマン(ユーザー)の間に無理矢理入っていって、守るディフェンスです。
スクリーナーとユーザーの間にスペースがあるようなスクリーンプレイの場合には非常に有効であり、スクリーンをほぼ無効化できますが、スクリーナーとユーザーの間にスペースがない場合には、無理矢理入っていく必要があり、若干スクリーンに引っかかる形になって後手にまわる他、無理矢理スクリーンを押したり、ユーザーについていこうと手を出したりしようとする形になるため、ディフェンスファウルを取られやすいということに注意が必要です。
スライド(ドロップ)
スライドとは、ファイトオーバーと同じく、スクリーンの効果を無効化することを目的に、ユーザーにディフェンスがついて行くディフェンスの守り方ですが、ファイトオーバーとは違い、スクリーンの後ろをすり抜けて、ユーザーの行く方向に先回りするような動きをします。
ユーザーの行く方向(特にゴール側)に先回りできるため、ユーザーがドライブしてくるようなパターンには簡単に対処ができるのですが、ユーザーがシューターなどの場合には、フリーでシュートを打たせてしまうことになるため、注意が必要です。
スイッチ
スイッチとは、ここまで紹介した2つの守り方と違い、マークマンを捕まえるのではなく、元々のスクリーナーをマークディフェンスとユーザーをマークしているディフェンスが、スクリーンの瞬間に入れ替わって守る戦術です。
スイッチの場合には、スクリーンに引っかかった瞬間にボールを持っている選手がフリーになることを防ぐことができるのですが、身長やスピードでのミスマッチが生まれやすく、逆に身長があって複数のポジションを守ることができるディフェンダーがいると効果的になります。
オフェンス側はミスマッチをつくことを目的としているところもありますので、できるだけスイッチはしない方が良いと言われていたりもしますが、フリーを作らないために、スクリーンには必ずスイッチで対応するというルールでディフェンスを構築するチームもあります。
最後に
いかがでしたでしょうか。
スクリーンプレイは、現代のバスケットボールでは、非常に有効でベーシックな戦術であり、
2人のプレイヤーだけで完結させることのできる攻撃であるため、
どんなチームでも戦術として取り入れています。
そのため、多くの派生的な戦術も出てきており、
ここで紹介したもの以外にも多くのスクリーンプレイが生まれてきていますが、
今後も多くのスクリーンプレイが誕生することでしょう。
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