バスケットボールのルールでは、「1人の選手が5回のファウルをした場合には退場」や、
「各クォーターのチームの合計ファウルが5回を超えた場合に、相手チームにフリースローが与えられる」などというものが存在します。
こういった観点から見て、ファウルを犯してしまうこと自体、良くないことだと理解できるでしょう。
バスケットボールの用語としては、このファウルに関するものとして、「ファウルトラブル」という用語があります。このファウルトラブルの用語解説と、そうなったときのセオリーの対処法についてご紹介します。
ファウルトラブルとは?
バスケットボールにおける、「ファウルトラブル」とは、主に1人の選手のファウルの数が多くなってきた状態を表現しますが、チームの合計ファウルが多くなってきた場合にもファウルトラブルという言葉を使うことがあります。
そもそもなぜ、ファウルが多くなった状態を「トラブル」と表現するのかというと、
両チームに対しての影響が大きいことが挙げられます。
特に主力選手がファウルトラブルになってしまい、最終的に退場になることを考えると、相手チームを波に乗せる可能性があるだけではなく、自チームの勢いを削いでしまうという可能性が考えられます。この様な状態になってしまっては、試合終了のブザーが鳴る前に試合が決まってしまうことにもなりかねません。
その前段階の状態にあるのが、ファウルが多くなってきたところであるため、「トラブル」と表現するのです。
では具体的に、個人のファウルトラブルとチームのファウルトラブルについてご紹介します。
個人のファウルトラブル
バスケットボールのルールでは、各選手は1試合の間に5回ファウルをコールされたら退場になります。
ということは、ファウルを4回犯してしまった場合には、「リーチ」状態となるため確実にファウルトラブルと言えるでしょう。
この「トラブル」という状態は、試合時間の進捗具合によっても変わります。
例えば、試合開始5分で2回のファウルを犯してしまった場合、単純計算で前半のうちに退場になってしまうため、ファウルトラブルの状態と言えるでしょう。
一般的には、
- 第1クォーター終了時点で2回
- 第2クォーター終了時点で3回
- 第4クォーター残り5分までの間に4回
のファウルを犯してしまうと、ファウルトラブルとして表現されることが多くなります。
チームのファウルトラブル
基本的にファウルトラブルとは「個人選手」のことを指すことが多いため、あまりチームのファウルトラブルのことが表現されることはありませんが、TVやインターネットの放送などで解説の方々がたまに表現としてチームのファウルトラブルを話していますので、少しご紹介します。
1つのクォーターでのファウルの数が多い
ルールでは1つのチームが1つのクォーターに5回以上ファウルを犯すと、それ以降のそのクォーター内のファウルは全てチームにフリースローが与えられます。
これがクォーター終盤(残り1分)などの段階では、ファウルトラブルと表現されることは少ないですが、クォーターが始まって5分などのタイミングでチームファウルが5個に達してしまった時などは、相手にフリースローを与える回数が多くなる可能性があるため、ファウルトラブルと表現されることがあります。
1チームの複数の選手のファウルが多くなった場合
1チームでファウルトラブルになっている選手が複数発生した場合などに、チームとしてのファウルトラブルとして表現されることがあります。
例えば、前半で3回ファウルをしている選手が2人以上発生し、その選手がスターティングメンバーだった場合などは、相当厳しい状況と言えるでしょう。
ファウルトラブルが起きたときの対処法
では、ファウルトラブルが起きたときにはどうすればいいのか?という対処法について、セオリーや有効な手段などをご紹介します。
個人ファウルトラブルに対する対処法
個人ファウルが多くなった場合、ファウルトラブルに陥っている選手は、ファウルを犯さない様に積極的なプレイができなくなってしまうことが多々あります。そのための有効な対処法は次の通りです。
該当選手をベンチに下げる
これは、試合時間の進捗度合いにもよりますが、ファウルトラブルになっている選手が積極的なプレイができていないのであれば、思い切ってベンチメンバーに交代することでチーム力の低下を防ぐことができます。
ファウルトラブルの影響で60%の力しか出せないプレイヤーと、100%でプレイできるベンチメンバーを比べたときに、どちらが実力が上なのかも考える必要がありますし、そのタイミングが「勝負所」なのかどうかをしっかりと見極める必要もあります。
残り10秒で同点の場面で得点を期待できる選手が、前半にファウルトラブルになってしまった場合には、ベンチに下げるという決断が望ましいでしょう。
マークマンを交代する
個人選手のファウルの多くは、ディフェンスのタイミングで起こります。そのため、ファウルトラブルになってしまっている選手のマークマン(マークする相手チームの選手)を、自チームの中で交代して、ファウルトラブルに陥った選手の負担を軽減させるという方法があります。
ファウルトラブルになっている選手がエースであったり、精神的支柱のキャプテンなど、ベンチに下がるだけでも相当チームにダメージがありそうで試合の状況としてまだベンチに下げなくても大丈夫そう、もしくはベンチに下げては負けが確定してしまう様な場合に、取られることが多い解決策です。
プレイを制限する
元々オフェンスでチームに大きく貢献できるが、ディフェンスがそこまで得意ではないような選手が、ディフェンスのときにファウルが重なって、ファウルトラブルになってしまった場合、ディフェンスでの貢献度が低いことを逆手に取り、その選手に「ディフェンスを頑張らなくていい」という指示を与えることで、ファウルトラブルを解決することができます。
先述した様に、個人ファウルの多くはディフェンスのタイミングでコールされるためディフェンスでのプレッシャーを緩めればファウルの可能性は大きく減ることになります。ディフェンスで元々そこまで期待されていない選手だからこそ許されることではありますが、この様な形で「手を抜く」ことでファウルトラブルの解消が試合の中で行えるのです。
チームのファウルトラブルに対する対処法
チーム全体のファウル数が多くなり、相手チームにフリースローを与えることが多くなり、得点差が離されそうになったり、チームの選手の複数人がファウルトラブルになってしまった場合、チーム全体のプレイが消極的になってしまい、より一層相手チームを勢いに乗せてしまうことになりかねません。
そう言った時の有効な対策についてご紹介します。
ゾーンディフェンスを適用する
この対策は、相手チームの特定の選手のスキルがとても高く、マンツーマンディフェンスで対処していたことにより、複数の選手がファウルトラブルに陥った際に有効になります。
ゾーンディフェンスは「エリア」を守るディフェンスですので、マンツーマンディフェンスよりは1人1人のプレイヤーの力量差がそこまで出ません。そのため、ファウルが重なることを抑えることができますし、ファウルトラブルになってしまっている選手のディフェンスの消極さもチーム全体でカバーすることができる様になります。
※ゾーンディフェンスについての詳細はこちら
各選手の連続出場時間を細かく区切る
ファウルが多くなる要因の一つとして、選手個人の疲労が考えられます。疲労がたまった選手はなかなか「脚」を使った動きがしにくくなり、反応が少し遅れ出します。その中でもプレッシャーをかけてプレイしていると、相手選手との接触が多くなりますので、ファウルが多くなりがちです。
また、1人の選手のディフェンスの出足が遅れると、他の選手がカバーせざるを得ない場面が増え、その影響で他の選手にまでファウルが重なることになります。
そのため、1人の選手の連続出場を7分まで(どれくらいの時間にするかは状況次第)とルールを決めて連続出場時間を細かく区切ってベンチに下げて休憩させることで、チーム全体のファウルの数を減らすことができるのです。
審判の基準を聞いてプレイを修正する
こちらは、チームのコーチ or キャプテンが基本的に行った方が良いことになりますが、
審判の判定に文句を言うのではなく、「今のプレイのどこがファウルだったのか」など、
判定になった基準を聞き出すことによって、プレイを修正し、ファウルトラブルを抑えることができます。
感情的になって、「今のどこがファウルだったのか?」などと聞くと、
審判への侮辱行為と捉えられてしまう可能性があり、最悪テクニカルファウルをコールされることがありますが、
言い方や話しかけ方などを工夫すれば、審判から判定となった基準を聞くことができます。
- 選手が重なって今のプレイが見えなかったが、どうなってファウルになったのか教えてほしい
- 自分の目線ではファウルの様に見えなかったが、審判からはどの様に見えていたのか教えてほしい
- うちのチームで共通してファウルになっているプレイはあるか教えてほしい
- 出来るだけクリーンなプレイをしたいので、修正するためにどこがファウルだったか教えてほしい
といった言い回しで、審判の基準を聞くことができれば、
審判側も「文句を言われた」のではなく、「修正したいから聞いてきた」や「見えなかったから状況を説明して欲しい」と捉えられるため、テクニカルファウルはコールされにくくなります。
「なんでうちのチームばかりファウルがコールされるのか」や、
「相手もやっているだろう」などの感情的な言葉や表現が入ってしまうと、
テクニカルファウルをコールされやすくなるため、気をつけましょう。
また、審判と会話するのはコーチ陣もしくはキャプテンが行うと効果的です。
他の選手でももちろん会話することはルール上NGではありませんが、
「チームを代表して確認する」という形を取れば、
心理的に抗議されていると捉えられにくいため、オススメです。
まとめ
いかがでしょうか。
ファウルトラブルは、避けたいもののバスケットボールの試合の中では、
知らず知らずの間に陥ってしまう難しい課題です。
しかし、ここの対処を誤らずに対応していけば、
ファウルトラブルになりながらもチームとして勝利を掴み取ることも問題なくできます。
審判との相性などもありますが、対応を早めに行って、
ファウルトラブルに陥っても勝てるチームを目指しましょう。
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