バスケのファウルは、基本的に相手プレイヤーとの接触に対するルールとなっています。
しかし、バスケのルールには1つだけ、「接触しない行為」に対するファウルのルールが存在しています。
それがテクニカルファウルです。試合でみていると、意外とコールされることが多いものなのですが、プレイ以外のところで起こることも多く、実際には、何があったかわからない場合もあります。
そこで、今回はテクニカルファウルのルールや適用要件、罰則について、初心者でもわかるように徹底的に解説していきます。
そもそもテクニカルファウルとは
テクニカルファウルとは、身体の接触がないところで発生するファウルのことで、「スポーツマンシップに乗っ取っていない言動」に対してコールされます。
バスケのファウルの中で唯一、「言動」に対してもコールされるファウルのため、プレイ中の選手だけではなく、監督やコーチ、ベンチに座っているプレイヤーもコールされる可能性のあるファウルです。「言動」に対するファウルのため、このテクニカルファウルが多い選手は、一般的に試合中の態度や素行の良くない人間であると理解されます。
出場中のプレイヤーのテクニカルファウル
コート上でプレイしている選手が、テクニカルファウルをコールされる場合には、審判の判定へ抗議した、相手チームへ暴言を吐いた、試合の進行を妨げるような行為をしたなどの場合にコールされます。
実は、肘を振り回すこともテクニカルファウルの要件とされており、肘が当たらなくても、振り回していると判断されれば、テクニカルファウルがコールされることがあります。
ベンチの選手やスタッフのテクニカルファウル
ベンチにいる選手やコーチなどが、テクニカルファウルをコールされる行為は、過度な挑発行為、審判の判定への抗議、勝手にコート上に入る、ベンチエリアを正当な理由なく出ていくなどが該当します。
シュートが決まっても、コート上の選手がベンチエリアに入ることは問題ありませんが、喜びのあまりベンチの選手やコーチがコートの中に入ってしまうと、テクニカルファウルを取られる可能性があります。
テクニカルファウルの規則原文
JBA(日本バスケットボール教会)が出している、ルールブックの中から、テクニカルファウルに関わる部分の原文をご紹介します。
第36条 テクニカルファウル (TF:Technical foul)
36-1 言動や振る舞いに関する規定
36-1-1 ゲームは、両チームのプレーヤー、チームベンチパーソネル、審判、テーブルオフィシャルズ、コミッショナー(同席している場合)を含むこれら全ての人たちの完全な協力によって成立するものである。
36-1-2 両チームは勝利を得るために全力を尽くさなければならないが、これはスポーツマンシップとフェアプレーの精神に基づいたものでなければならない。
36-1-3 競技規則の精神と目的に対して、意図的にあるいは繰り返し行われる非協力的な行為は、テクニカルファウルとみなされる。
36-1-4 審判は、明らかに意図的ではなくゲームに直接的に影響のない軽微な違反については、テクニカルファウルを科さずに警告を与えることがある。ただし、警告の後もその同じ違反が繰り返し続く場合はその限りではない。
36-1-5 ボールがいったんライブになってから、前に起こったこの規則に該当する違反が見つかった場合は、見つかったときにテクニカルファウルがあったものとして処置をする。この規則に該当する違反があってからそれが見つけられるまでに起こったことは、全て有効である。36-2 暴力行為
36-2-1 ゲーム中に、スポーツマンシップとフェアプレーの精神に反する暴力行為が起きたときは、審判または必要に応じて警備担当者により、暴力行為を速やかにやめさせなければならない。
36-2-2 コート上もしくはその付近で、プレーヤーやチームベンチパーソネルによる暴力行為が発生した場合は、審判は速やかにそれを止めさせる。
36-2-3 審判やテーブルオフィシャルズあるいは相手チームに対し、暴行を加えたコーチ、プレーヤー、チームベンチパーソネルは、速やかに失格・退場させられる。
クルーチーフは、その事象を大会主催者に報告しなければならない。
36-2-4 審判が許可をしたときのみ警備担当者はコートに入る。しかし、観客が明らかな暴力的な意図をもってコートに侵入する場合は、チームや審判、テーブルオフィシャルズを守るために、警備担当者は速やかにコートに入らなければならない。
36-2-5 コートの周囲以外の会場内、出入口、通路、更衣室(ロッカールーム)などの全てのエリアは、大会主催者の管理下にある。
36-2-6 プレーヤー、チームベンチパーソネルによる用具・器具を破損するおそれのある行為は、絶対に許してはならない。このような行為があったときには、審判はそのチームのコーチにそのような行為をやめさせるように警告をする。その行為が繰り返された場合には、速やかにテクニカルファウルを宣さなければならない。36-3 定義
36-3-1 テクニカルファウルは、相手チームのプレーヤーとの体の触れ合いのない振る舞いであり以下が該当するが、これらに限るものではない:
◦審判からの警告を無視する
◦審判、コミッショナー、テーブルオフィシャルズ、あるいはチームベンチパーソネルへの敬意を欠く振る舞い、異論表現
◦審判、コミッショナー、テーブルオフィシャルズ、あるいは相手チームへの敬意を欠く言動、異論表現
◦観客に対して無作法に振る舞ったり挑発する、あるいは煽動するような言動をとる
◦相手チームのプレーヤーを挑発したり侮辱する
◦相手チームのプレーヤーの目の前で手を振ったり、手をかざしたりして視野を妨げる
◦肘を激しく振り回す
◦バスケットを通過したボールに故意に触れる、またはボールが素早くスローインされるの
を妨げてゲームの進行を遅らせる
【補足】審判にボールを返さずに試合の進行を遅らせるような行為等も上記項目に該当する。
◦フェイク(ファウルをされたと見せかける)
◦リングをつかんで体重をかける。ただし、ダンクショットのときにやむを得ず瞬間的にリングをつかむことは差し支えない。また自分や他のプレーヤーが怪我をするのを避けようとしたと審判が判断したときは、リングをつかんでもテクニカルファウルとはしない
◦最後のフリースローでボールがリングに触れる前にゴールテンディングのバイオレーションをしたときは、オフェンスのチームに1点が与えられ、さらにそのディフェンスのプレーヤーにテクニカルファウルが宣せられる。
36-3-2 チームベンチパーソネルによるテクニカルファウルは、審判、コミッショナー、テーブルオフィシャルズ、相手チームに対して失礼な態度で接したり、体に触れたりする行為、またゲームの進行や運営に支障をもたらしたりする違反のことをいう。
36-3-3 テクニカルファウルを2個あるいはアンスポーツマンライクファウルを2個、もしくはテクニカルファウルとアンスポーツマンライクファウルを1個ずつ記録されたプレーヤーは失格・退場になる。
36-3-4 コーチは以下の場合、失格・退場になる。
◦コーチ自身のスポーツマンらしくない振る舞いによるテクニカルファウル「C」が2個記録された場合
◦チームベンチパーソネルのスポーツマンらしくない振る舞いによって、コーチにテクニカルファウル「B」が3個記録された場合、あるいはそれらのテクニカルファウルとコーチ自身のテクニカルファウル「C」とを合わせて3個のファウルが記録された場合
36-3-5 プレーヤーもしくはコーチが、36-3-3あるいは36-3-4に則り失格・退場処分となる場合、テクニカルファウルによる罰則のみが与えられ、失格・退場による追加の罰則は与えられない。36-4 罰則
36-4-1 テクニカルファウルが宣せられたときは、次のように記録をする:
◦プレーヤーの場合は、そのプレーヤーに1個のテクニカルファウルが記録され、チームファウルに数える
◦チームベンチパーソネルの場合は、コーチに1個のテクニカルファウルが記録され、チームファウルに数えない
36-4-2 相手チームに1本のフリースローが与えられ、:
◦スコアラーズテーブルの反対側のセンターラインの延長線上からのスローインで再開する
◦第1ピリオドを始める場合は、センターサークルでのジャンプボールになる
【補足】第1ピリオドが始まる前にテクニカルファウルが記録された場合は、罰則に応じたフ
リースローをしたあと、ジャンプボールでゲームを開始する
テクニカルファウルの罰則
テクニカルファウルは、アンスポーツマンライクファウルと同様に、通常のパーソナルファウルとは違う、少し重い罰則がかせられます。
テクニカルファウルをした選手への罰則
テクニカルファウルをコールされた選手には、テクニカルファウルとして、ファウルが蓄積され、退場要件になる5つのファウルの1つとしてカウントされます。また、テクニカルファウルはチームファウルの1つとしてもカウントされます。また、少し重い罰則となるため、1試合でテクニカルファウルを2つ、もしくはテクニカルファウルとアンスポーツマンライクファウルを合計で2つ行うと、退場処分になります。
テクニカルファウルをしたベンチへの罰則
テクニカルファウルをコールされたベンチに関しては、コーチにテクニカルファウルがカウントされますが、チームファウルにはカウントしません。コーチ自身がテクニカルファウルを2つコールされると退場処分になりますが、ベンチプレイヤーとコーチ合わせて3つのテクニカルファウルになった場合にも、コーチが退場処分になります。
テクニカルファウルを受けたチームへのボーナス
テクニカルファウルを受けたチームには、フリースローが1本与えられます。
また、試合再開については少し複雑になっており、ディフェンスをしていたチームのテクニカルファウルであれば、フリースローを打つのは元々オフェンス側のチームですので、試合再開もそのチームからとなりますが、オフェンス側のチームがテクニカルファウルをコールされた場合には、ディフェンス側のチームにフリースローが与えられたあと、元々オフェンスをしていたチームからのスローインで試合再開となります。
バスケの試合でよくみられるテクニカルファウルのパターン
いろいろとテクニカルファウルは、適用される要件があるのですが、ここからはバスケの試合中でよく見られるテクニカルファウルのパターンをご紹介します。
審判への抗議・文句
バスケの試合で見られる80%ほどのテクニカルファウルは審判への抗議によるものです。特に大きなジェスチャーをしたり、詰め寄って行ったりするとコールされることが多く、接触があったのに、ファウルを取ってもらえなかったというパターンが多いです。
報復行為
バスケの世界は、ルール上接触は全てファウルとなっていますが、実際にはガンガンぶつかり合っていて、審判の線引きによってファウルかどうかが分かれています。そのため、多少危険だと思われる行為でもファウルがコールされないこともあり、その場合に、やられた選手やチームが同じことをやり返して、試合が乱暴にヒートアップすることがあります。
そんな報復行為とも取れる、危険なやり返しが見られた場合には、テクニカルファウルがコールされることがあります。
乱闘
バスケットボールというスポーツは、意外と乱闘や乱闘未遂のような衝突が起こるスポーツであり、このような乱闘騒ぎはほぼ必ずテクニカルファウルがコールされます。また、止めた選手やコーチ以外には基本コールされるため、乱闘に関われば、両チームの選手にテクニカルファウルが一気にコールされることもあるあるです。
最後に
いかがでしたでしょうか。
最後の方に記載したように、バスケの試合中に起こるテクニカルファウルの8割程度は、
審判への抗議によるものです。
もし、試合を観戦していて、テクニカルファウルがコールされたのは分かったが、
何が起こったのかわからなかった場合には、誰かが審判に抗議したことでコールされたと、
理解してもそこまで違うことはないと思います。
しかし、罰則が少しだけアンスポーツマンライクファウルより複雑なので、
ここを覚えておけると試合がより楽しくなることでしょう。
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