バスケットボールというスポーツは、大体のルールは知られているけどプロ選手の名前も知らないし、チームも知らない。でも選手はたくさんいる。というように、メジャーであるがマイナーというような中途半端な位置にあったと言えます。
しかし、2020年現在、国内でのプロリーグは盛り上がり、NBA選手が複数誕生し、女子はアジアチャンピオンとして君臨し、3×3という新競技によってカジュアル化され、学生カテゴリもネット配信によって多くの人に伝わるようなスポーツになりました。
そんな盛り上がりを見せているバスケットボールですが、国内での競技人口は他のスポーツを抑えて1位であるとも言われており、活躍できる人がいる一方、挫折を味わっている選手が多いこともまた事実です。
そこで今回は、バスケで起きる「挫折」の経験について、乗り越える方法や挫折を経験した人のエピソードなどをご紹介します。
怪我での挫折
バスケットボールというスポーツは、他人が見ているよりも遥かに激しく、接触も多いスポーツのため怪我との戦いになりがちな競技です。そのため、怪我によって挫折感を味わうというのはどんな選手であっても起こりうることです。そして、実際に多くの選手が怪我による挫折によって心の痛みを抱えたりしてしまうのも事実です。
怪我による挫折を味わう主な要因は次の3つに分類できます。
- 怪我によってバスケができないと感じる
- 怪我によって思い通りのプレイができない
- 怪我で休んでいる期間に置いていかれてしまう
怪我によってバスケができないと感じる
現在は、医学の発達によって、一発で選手生命が立たれてしまうような怪我をする選手は少なくなりましたが、それでも選手生命が絶望的になってしまうような怪我はまだまだ存在しているものです。このような怪我の時には、完全に絶望してしまうのもわかります。
大好きだったバスケットボールができなくなる。
そう考えただけで、相当に辛いでしょう。
しかし、そんな怪我から第一線に戻ってきた選手がいるのも事実です。
例えば、ロサンゼルス・クリッパーズの顔としてチームを引っ張っていたショーン・リビングストンは、1度の怪我で、左膝の前十字靭帯、内側側副靱帯、後十字靭帯(膝の靭帯4本中3本)を断裂し、大腿骨、脛骨、膝蓋骨(膝の皿)が脱臼し、膝の動脈が切断していれば足を切断する必要もある怪我をしました。
選手生命どころか、全ての怪我を手術で治療しても歩けるかどうかすら怪しい状況です。
しかし、彼は凄まじい精神力によって、NBAの世界に戻り、複数のチームを渡り歩きながらゴールデンステイト・ウォリアーズの黄金期を支え、NBAチャンピオンにまで上り詰めました。
この怪我について、リビングストンは、「あの時のケガのお陰で、僕は自分自身を見つけるチャンスを得ることができたし、自分と世界に対して、それぞれが置かれた状況によって今後の人生が決まるわけではないと証明する機会を得ることができた」とインタビューにて語っています。
怪我によって思い通りのプレイができない
手術が必要になるレベルの怪我をすると、復帰できたとしても以前のようにプレイできないということが起こります。
それは、怪我による痛みの場合もあれば、その怪我が頭を過ってしまい、心理的なブレーキのようになってしまうような場合もあります。頭の中に思い描くプレイと、実際にできるプレイが違ってしまって、挫折感を味わうこともあるでしょう。
そんな時には、プレイスタイルを変えてみるという解決策があります。
もちろん、自分の好きなプレイスタイルがあるというのは重々承知です。
しかし、思ったようにプレイできなかったりバスケをやめてしまうよりは、プレイスタイルを変えてもバスケットボールをプレイし、チームに貢献して勝利を目指すという方が気持ちが良いのではないでしょうか。
怪我に限らず、現役生活の長いプレイヤーはその時の自分に一番最適なプレイスタイルを探し、プレイしています。マイケル・ジョーダンやビンス・カーターは、身体能力ゴリ押しのスタイルから、ジャンプシュート中心のプレイスタイルに変化させ、自分を高め続けました。
怪我によって、プレイスタイルを変えたと言えば、デリック・ローズでしょう。
同じく身体能力を前面に押し出したプレイスタイルでしたが、怪我の連続になって精神的にダウン。引退も囁かれましたが、復活し別のプレイスタイルでキャリアハイの50得点をマークしました。
「バスケットボールが自分を離してくれない。自分に限界は作らない。今すぐに辞めようと思えば、そうすることもできる。でも、自分には子供がいるんだ。息子と娘に、いつか『言い訳は聞かない。不平不満を言わず、自分で向き合え。自分がやりたいこと、やるべきことをやるんだ』と言えるようになりたいんだ」と語り、世界中のスポーツファンを涙させたのも記憶に新しいところでしょう。
怪我で休んでいる期間に置いていかれてしまう
怪我から復帰までの間のメンタルで参考になるのはポール・ジョージかもしれません。
アメリカ代表のエキシビジョンマッチの最中、ブロックに飛んだジョージは、着地に失敗して脛がありえない方向に曲がってしまうという見るだけで血の気が引く怪我を負いました。
そんな大怪我にも関わらず、8ヶ月でコートに戻ってきたポール・ジョージですが、このリハビリ期間中にやっていたトレーニングが話題になっています。
椅子に座ってスリーポイントの練習をしたり、筋トレで他の部位を鍛えていたり、怪我前よりもパワーアップしてコートに帰るために、怪我をした部分を使わなくてもできる練習を繰り返し行っていたと言われています。
こうしてチームのエースだったポール・ジョージは、スーパースターとしてコートに戻ってくることができたのです。
焦ってしまう気持ちはわかります。他の選手に置いていかれる気がするのも痛いほどわかりますが、別メニューでさらにレベルアップしてチームに復帰すれば、何も怖いものはないでしょう。
このように怪我での挫折でも、乗り越え方や対処法は様々あります。もちろん、そんなことはできない。もういいんだ。という気持ちがあるのも理解できます。怪我はそれほど怖いものです。
しかし、バスケットボールという競技に戻るのであれば、最低でもプレイできるまでに精神と身体を戻さなければなりません。
そのためには、起こってしまった過去のことを考えるのではなく、この状況からどうやって前に進むべきなのかを考えると良いでしょう。
技術面での挫折
バスケは、実力差がはっきりと結果に出るスポーツと言われており、技術面での差がはっきりと出てしまった場合、自分の実力などに疑いが出てしまって挫折感を味わいやすいかもしれません。技術面というのは、努力で培っていくものです。だからこそ、そこで差が出た時に、挫折感や自分への嫌気のようなものを感じてしまうとも言えます。しかし、逆転の発送で考えれば、技術面は「努力」で補うことが可能です。
マイケルジョーダンは、高校生の時にチームのメンバーから外されたというエピソードは有名ですが、そこから努力を重ね、神の域まで達することができました。日本人2人目のNBA選手となった渡邊雄太選手は、NBA1年目から2年目になった時に、出場時間こそチーム事情によって減りましたが、シュート確率は軒並み向上しました。このように、上手いと思われているプレイヤーも、NBA選手も日々練習をして技術を向上させているのです。
自分には、こんなに練習ができないという考えもあるかもしれませんが、挫折感を解消するには、技術面は練習で補うことが一番です。そうでなければ、スタイルや考え方を変える必要があるでしょう。
技術面の挫折感は、そこまで大きな深いものではありません。練習する。それだけで解消されていきます。
ジョーダンの名言にも、「間違ったフォームで練習を重ねたとしても、そのフォームでシュートを打つ達人になる」という言葉を残しています。どれだけ遠回りに思えても、練習量は裏切りはしないのです。
才能での挫折
バスケは、身長の高い選手が有利で、身体能力の高い選手が有利です。これは紛れもない事実でしょう。しかし、そんな才能の差とも呼べるものも、どうにか埋められるものであると言えます。
なぜかと言えば、そもそも身長の高い低いに関しては、ある程度ポジションで差がつけられていますし、身体能力の低さはプレーの選択で乗り越えられるからです。あのNBAでも、マグジー・ボークスという選手は160cmの身長ながら10シーズン以上に渡ってプレイしました。そう考えれば、身長の低さはそこまでできない理由にはならないでしょう。
例えば、スピードが遅いということがネックなのであれば、判断のスピードを上げる努力をすれば、「先に」動き出せるため、スピードの遅さを埋めることができますし、パワーが足りない場合には、筋トレでも埋められますが、ファウルをもらう技術を向上させることで、相手選手を退場させることができるようになるかもしれません。
埋められないほどの差があると言いたくなることもあるかもしれません。
でも、そんなあなたにもバスケットボールプレイヤーとしての才能の片鱗がどこかにあるはずです。頭の良さや判断の速さ、プレーの正確さやチームの雰囲気を盛り上げる能力など、身長や身体能力以外にも必要な才能はあります。
こういった才能の差も、努力や考える方向性でどうにか乗り越えることができるのです。
気持ちの面での挫折
意外にも一番「しんどい」と感じるのは、才能や技術面での差ではなく、「気持ちが切れてしまう」ような気持ちの面での挫折かもしれません。しかしこれも考え方や自分との向き合い方を変えれば、乗り越えられないものではありません。
気持ちの面での挫折の多くは、ずっと頑張ってきた人に多いです。頑張ったのに結果が出なかった。頑張ってきたけど、一旦の区切りがついたところで振り返ったら、やる気がなくなってしまったなどです。
全国大会などでも活躍し、エリート街道を歩んできた、寺嶋恭之介選手もその1人と言えるかもしれません。勝つバスケを大学までやったところで、大学4年の時に自分から退部してしまったそうです。そこから1年半のブランクを経て、魅せるバスケの形をメインとしてコートに戻ってきました。この時に、自分とバスケの向き合い方について、真剣に考えたようです。
こういった気持ちの挫折のような場合、無理に戻る必要もありません。やり遂げたと感じたのであれば、完全にフェードアウトするのもアリかもしれません。しかし、一回離れることで見えてくることや感じることがあるのも事実でしょう。そこで自分の考え方や理想について捉え直すことで、バスケへのやる気や好きという気持ちにさらに正直になれるかもしれません。
気持ちが切れてしまうような、挫折の場合、確実に一度止まってしまうということも悪いことではありません。もし、そこで本当に立ち止まってしまったとしても、そこまで全力でやってきたことはあなたをこれからも支えてくれることでしょう。
最後に
挫折は、全力でやっているからこそ感じるものとも言えます。
こんなに頑張っているのに結果が出ないのは、才能の差なのかもしれない。頑張ったはずなのに、ライバルの方が頑張っていた。頑張っていたのに怪我で追い抜かれてしまう。そんな気持ちがあるからこそ、挫折と呼ぶのかもしれません。
バスケが本気で好きならば、漫画などからやる気を復活させることもできるかもしれません。一度立ち止まって、名作を読み返してみるのも良いでしょう。
“「負けたことがある」というのが、いつか大きな財産になる。”
そんな名言も出てきますが、挫折を味わった経験も、いつか大きな財産になるでしょう。
挫折感はそれを感じること自体は負けではありません。そこからどうやって立ち直っていくか。無理しすぎずに乗り越えられると良いですね。
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