さて、2020年と言えば東京オリンピックの年です。この記事は2020年3月20日に書いているため、新型コロナウイルスの影響で東京オリンピック開催が危ぶまれている段階ではありますが、
政治家やIOCなどオリンピックに関わる方々が、口を揃えて「完全な形での開催を目指す」と明言しているため、複雑なところでしょう。
しかし、東京オリンピックが予定通り開催されるとなれば、日本にNBAスターだけではなく、世界中の猛者たちがやってきます。その中で日本はどの程度実力を発揮できるのかが注目になります。
そこで今回は、バスケットボールが強い国をFIBAランキングをベースにご紹介し、日本の立ち位置や実力について解説させていただきます。
2021年8月のランキングはこちら
最新のFIBAランキングと仕組み
今回は、国際バスケットボール協会、通称・FIBA(サッカーのFIFAに当たる)が公開している、「FIBA WORLD RANKINGS presented by NIKE」という世界ランキングを元に、世界の強豪国TOP10をご紹介させていただきます。
ちなみに、このFIBAランキングの仕組みがわからないと理解しにくい部分もありますので、まずはFIBAランキングの仕組みをご紹介します。
FIBAランキングの概要
FIBAランキングはナショナルチーム(国の代表チーム)の強さを表すランキングとなっており、「過去8年間」の「主要国際大会での成績」をポイント化し、ランキング化されています。このように、主要国際大会以外はポイントを加算しない部分は、サッカーのFIFAランキングと違ってきており、FIFAランキングよりも長い期間の集計が取られていることも注目すべき点です。
FIBAランキングの仕組み
では、具体的にはどのような計算方法が用いられているのかをご紹介します。先述したように、「大会の重要度」と「成績」でポイントが分かれており、大会の重要度(A)×成績(B)でポイントが計算される仕組みとなっています。 詳細は以下の通りです。
<大会の重要度(A)>
大会 | ポイント |
---|---|
ワールドカップ | 5 |
オリンピック | 5 |
U-19世界選手権 | 1 |
U-21世界選手権 | 1 |
アフリカ選手権 | 0.2 |
アメリカ選手権 | 0.8 |
アジア選手権 | 0.3 |
ヨーロッパ選手権 | 1 |
オセアニア選手権 | 0.1 |
<大会の成績(B)>
順位 | ポイント |
---|---|
金メダル (1位) | 50 |
銀メダル (2位) | 40 |
銅メダル (3位) | 30 |
4位 | 15 |
5位 | 14 |
6位 | 13 |
7位 | 12 |
8位 | 11 |
9位 | 10 |
10位 | 9 |
11位 | 8 |
12位 | 7 |
13位 | 6 |
14位 | 5 |
15位 | 4 |
16位 | 3 |
17位 | 2 |
18位以下 | 1 |
※wikipediaより抜粋:https://ja.wikipedia.org/wiki/FIBA%E3%83%A9%E3%83%B3%E3%82%AD%E3%83%B3%E3%82%B0
このように、国際大会を勝ち上がる難易度毎に大会の重要度としてポイントの比重が重くされています。そのため、オセアニア選手権やアジア選手権だけでずっと1位を取り続けたとしても、ワールドカップやオリンピックで成績を残せないとなかなか上位には入れないシステムとなっています。
世界のバスケ強豪国TOP10
このランキングは、2020年3月3日更新のFIBAランキングを元に作成しています。
※参照元:http://www.fiba.basketball/rankingmen#tab=fiba
1位:アメリカ
堂々の1位はアメリカ。文句が言えないレベルで強い国です。
2019年のワールドカップではメンバーがなかなか揃うことがなく、難しい戦いを強いられましたが、過去のオリンピックでの結果が入っているため、1位になっています。ワールドカップやオリンピックなど、最重要な国際大会の場合には、全員NBA選手という他の国ではありえない豪華な布陣で臨んでくるのがアメリカです。しかし、2019年のワールドカップでは辞退する選手や怪我の選手の多さに悩まされました。オリンピックではさらにレベルの高い選手たちが参加する模様ですが、チームとしてどれほどのレベルまで仕上げてくるのかが注目です。
2位:スペイン
最近バスケを始めた方、見始めた方には少し意外かもしれませんが、スペインはバスケが最も盛んで強い国一つになります。
2006年、日本で開催されたワールドカップ(当時は世界選手権)と2019年のワールドカップでも優勝しており、オリンピックでも直近3大会で銀メダル2つ、銅メダル1つと、圧倒的な強さを誇ります。ガソル兄弟やリッキー・ルビオなどNBA選手も数多く輩出しています。ちなみに、スペインでは男性の約5割がサッカーをするそうですが、3割がバスケをするほどの人気だそうです。ユーロリーグという世界2番目のバスケリーグでも強豪のレアル・マドリードやバルセロナがあることも、代表チームが強い理由で、最近のNBAで多用されている、「スペインピック」など、戦術面でも世界をリードしている国でもあります。
3位:オーストラリア
オセアニア地域ですが、エリアの選手権ではアジアに入ってくる国です。
ワールドカップ10回、オリンピック13回出場と、世界大会の常連国です。しかし最高成績は4位とベスト4の壁をなかなか打ち破れないチームでもあります。
しかし、文化的にアメリカに出やすいこともあり、NBA選手が多く輩出されている国でもあります。現在で言えば、ベン・シモンズやジョー・イングルス、パティ・ミルズなどがオーストラリア代表として出場する可能性があり、フルメンバーになった場合には、NBAチーム並の顔ぶれとなります。
ただし、選手の意向やNBA側の事情がありフルメンバーが揃うことはなかなかありません。2019年ワールドカップのアジア予選のタイミングで、日本がオーストラリアを1点差で破ったことがバスケ界で話題になりましたが、その時のメンバーはNBA選手がいたものの、フルメンバーからは程遠いチームでした。
4位:アルゼンチン
南アメリカ大陸の雄、アルゼンチンですが、スペイン同様サッカーと同じくらい、国民にバスケが愛されている国です。
あまり知られていませんが、ワールドカップ(旧世界選手権)の初代チャンピオンがアルゼンチンでした。世界選手権、オリンピック共に優勝経験があり、2019年のワールドカップでも2位となった超強豪国です。絶対的なエースであったマヌ・ジノビリを引退で欠くことになりますが、ルイス・スコラやアンドレ・ノシオニなどのベテラン選手がチームを引っ張っています。ちなみに、日本代表監督のフリオ・ラマス氏はアルゼンチン出身です。
5位:セルビア
旧ユーゴスラビア時代から、世界のバスケットボールの先頭に立ってきた国です。
ユーゴスラビア、セルビア・モンテネグロ、そしてセルビアと、国代表としては3つの時代がありますが、ユーゴスラビア時代にオリンピック1回、世界選手権5回優勝。セルビア・モンテネグロ時代は短かったため、主だった成績はありませんが、セルビアとして出場したオリンピック、ワールドカップで共に最高成績2位と復権を果たしています。
アメリカとは違うスタイルの「ヨーロピアンバスケット」の中心にいる国で、大きくて動ける選手、小さいけどポストプレイを得意とする選手など、体の大きさやポジションに囚われない活躍をする選手が多いです。現在のチームの中心は、ニコラ・ヨキッチ、ボグダン・ボグダノヴィッチ、ミロシュ・テオドシッチになります。また、背伸びダンクで有名なボバン・マリヤノヴィッチもこのチームの一員です。
6位:フランス
オリンピック最高成績銀メダルを2回、ワールドカップ最高成績3位を2回経験しているフランスが6位です。
現在のNBAでも活躍している、ルディ・ゴベアを筆頭に、ニコラス・バトゥムなど優秀な選手がいるチームです。アマット・ウンバイという選手が代表に選ばれることがありますが、その選手は、三菱電機ダイヤモンドドルフィンズ名古屋でプレーした経験がある選手です。約70年ほどの間、主要な国際大会で平均してベスト8入りを果たしており、常に世界的にも強いチームが作られているイメージのある国です。
7位:ギリシャ
1932年にFIBAが設立された当初から加盟しているギリシャは、伝統と歴史がありますが、強くなり始めたのは1990年代頃からです。
2006年に日本で開催された世界選手権では、NBA選手は不在でしたが、レブロン・ジェームス、ドウェイン・ウェイド、カーメロ・アンソニーを擁するアメリカを破り準優勝をおさめ、世界に衝撃を与えました。基本的に堅守がチームカラーとなっています。現在の注目選手は、NBAでもMVPを獲得したヤニス・アデトクンボでしょう。
8位:リトアニア
リトアニアは、政治的な問題で、複雑な歴史を辿った国ですが、昔も今もバスケでは世界の強豪として君臨しています。
リトアニアは、最初は単独でヨーロッパ選手権に出場し、優勝するほどのレベルでしたが、1940年にソ連に編入されます。この後、ソ連代表に多くのリトアニア出身選手が起用され、世界屈指の強豪国となり、オリンピック・世界選手権でも優勝を経験しました。1990年にソ連からの独立し、再度単独の国としてFIBAに登録されました。オリンピックでは、リトアニアとして出場した大会ではベスト8を下回ったことがなく、ワールドカップでも、直近の2019年大会が9位であったのが最低成績であり、常に上位に入っている国となっています。チームとしての特徴は、フィジカルが強く大きな選手が多く、時代の波もありますが、基本的にはインサイドをゴリゴリ攻めてくる選手が多いチームです。
9位:チェコ共和国
チェコは、スポーツが強いイメージが少ない方が多いかもしれませんが、バスケットボールという競技においては、無視することができないほどの強豪国です。他のヨーロッパ諸国と同じく、1992年まではチェコ・スロバキアとして出場していましたが、その後はチェコ単独で国際大会に出場しています。
主要国際大会でメダルを獲得した経験はありませんが、多くの大会で1桁台の順位に入っていますので、強豪と言えるでしょう。チェコの目標としては、主要国際大会でまずはベスト4入りを目指すことになると思います。2019年のワールドカップで日本と対戦したのも記憶に新しいでしょう。派手さはありませんが、とても自力のあるチームです。
10位:ブラジル
スペイン、アルゼンチンと同じく、サッカーのイメージが強いかと思いますが、バスケもとても盛んな国です。
大陸選手権では、アルゼンチンやアメリカなどと対戦するため、とてもタフな予選を勝ち上がって世界大会に出場してきます。最近の国際大会では目立った成績は残せていませんが、オリンピックで銅メダルを3回、世界選手権で優勝2回、準優勝を2回、銅メダル2回を達成した古豪と呼べるようなチームでしょう。
常にタフな大陸選手権を戦ってはいますが、オリンピック14回、ワールドカップ16回出場と、コンスタントに大きな大会には出場しています。身体能力の高いガードと、リバウンドなどフィジカルが強いインサイドプレーヤーが活躍するチームである場合が多く、サッカー同様独特のリズム感で攻撃をする印象があります。
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日本やアジアの国のランキング
それでは、我々日本のランキングと近隣のアジアの国ランキングを見てみましょう。
アジアの中でのランキングTOP5
2位:イラン (22位)
3位:ニュージーランド (24位)
4位:中国 (28位)
5位:韓国 (30位)
です。
()内の順位は世界でのランクです。
この中で、オーストラリアとイランはすでに2020年の東京オリンピック出場が確定していますが、残りの3チームは、世界最終予選を戦い、同様に世界最終予選に残っている24チームのうち4チームに残ることができれば、東京オリンピックに出場することができます。
日本のランクは?
ここで疑問になるのが日本のFIBAランクです。実は日本は2020年3月時点で、FIBAランク40位、アジアの中で8番目の順位になっています。
しかも、2019年には世界選手権に出場したり、八村塁選手や渡邊雄太選手の活躍があったのにも関わらず、順位が下落しています。実はこれは、FIBAランクの決め方のところで説明した「過去8年」の合計であることと、「大会の重要度」に関係してきます。というのも、2006年で自国開催した世界選手権以来、男子の日本代表は主要な世界大会に出場できてすらおらず、ポイントが稼げませんでした。ですので、東京オリンピックやアジア選手権で好成績を残し続けることができれば、順位は自ずと上がっていきます。
ちなみに、2020年の東京オリンピックは開催国枠での出場となりますが、2019年のワールドカップ前の強化試合では、オリンピック世界最終予選に回った多くの国と対戦しましたが、相手のメンバー構成の部分も多少ありましたが、勝利をすることができていますので、着実に力がついてきていると言えるでしょう。
最後に
いかがだったでしょうか。
世界ランキングを上から見ていくと、思ってもいなかったような意外な国がいませんでしたでしょうか。
ダントツの1位はアメリカなのですが、ヨーロッパ勢が軒並み上位を占めており、トップ10のうち6カ国がヨーロッパの国となります。比較的身長が大きく、それでいて動ける身体能力と、経済的な発展がある国が多いからこそだと分析できます。
今後の日本代表はこの国々の中で戦っていくことが要求されてきます。強化試合なども複数組まれていくことでしょうから、もしTOP10の国々との試合がある場合には、注目して観戦してみてはいかがでしょうか。
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